その祈りは個人を超えて サムエル記第一2章1〜11節

跡継ぎができないことで苦しみ続けたハンナは激しく泣き、神様に思いの全てをぶつけました。そして、子が与えられるなら、
その子を主に捧げますと祈りました。彼女の心には、結果の如何に関わらず、神のご計画にお任せしたいという思いが生じて
いたようです。多くの場合、私たちは結果だけで神様の祝福、恵みを判断しようとします。心したいと思います。
結果的に、ハンナはサムエルを授かりました。彼女は全ての悲嘆を受け留めてくださる方がいることをどん底の状態で改めて
知ったと思われます。ハンナの苦しみは神様に行き着くための必要、試練だったのです。
エレミヤ書29章11節「わたし自身、あなたがたのために立てている計画をよく知っている。―主のことば―。それはわざ
わいではなく平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ。」
サムエルの誕生はハンナと夫エルカナ、そして、その一族に対する祝福だけではありませんでした。イスラエル国家全体に対
する祝福として捉えることができます。サムエルによって、最初の王、サウロが立てられ、そして、ダビデ王に繋がり、イス
ラエルの繁栄と導かれるのです。
そもそも、聖書66巻のテーマはキリストによる神の新しい創造です。ですから、聖書は遠い昔の、遠い異国の話ではありま
せん。私たちもその恵みに与ることができるし、与っているのです。
2章はハンナの歌で始まっています。詩篇の記述スタイルを見ることができます。ほとんどの文が対になっています。
又、比喩が沢山使われています。そして、彼女が到達した思いがよく表れています。中でも、際立っているのは2節です。
二つのことがまとめられています。
1)神は聖なる方です。
  畏敬、尊厳、信仰の対象です。
2)神は並ぶもののない方です。
  イスラエルは弱小国でしたが、ダビデに注がれた神の恵みによって、次第に力をつけ、強国になっていきます。民もその
  ことを多いに実感し、神に感謝しました。しかし、後にはそのことを忘れて、他の神々にも仕えるようになっていきます。
  それでも、神様はイスラエルを諦めずに、神の民として守り、導き、整え、裁きを与え、悔い改めを求めながら、子孫
  繁栄の最初の祝福の契約を頑なに通そうとしてくださっています。私たちはそういう父なる神の愛を理解しているでしょ
  うか。2節「私たちの神のような岩はありません。」私たちは偶像の誘惑に打ち勝つために、これを繰り返し告白しなけ
  ればなりません。全150編の詩篇も神様の御業を讃えて、忘れないことを私たちに求めています。詩篇1編2節「主の
  おしえを喜びとし、昼も夜も、そのおしえを口ずさむ。」
  神様が約束を守り、変ることがない方であることが頭では分かっていても、直ぐに忘れてしまうのが私たちです。
ハンナの賛歌は彼女の個人的神賛歌に留まらず、イスラエル全体に及ぶ神賛歌です。それは、この後、サムエルが神の器とし
て立てられることによって、より明確に示されていきます。そのことを覚えながら、引き続き、皆さんとサムエル記に聞いて
いきたいと思います。

唐川 尊議 牧師

2021年7月11日